クマノザクラ

約100年ぶりに発見された新種の桜「クマノザクラ」

[新種の桜]発見までの経緯を、クマノザクラの発見者である、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 九州支所 地域研究監 勝木俊雄さんにお伺いしました。

ヤマザクラとは思えない、紀伊半島産ヤマザクラの標本に出会う。

ー 紀伊半島でヤマザクラの調査を始めたきっかけを教えて下さい。

森林総合研究所 勝木氏:
10年以上前に、全国のヤマザクラを調査する中で紀伊半島産のヤマザクラと名前が付いた、葉の標本を目にする機会がありました。
しかし、どう見てもヤマザクラの標本には見えない。ただ紀伊半島南部で自生の桜はヤマザクラしかないことになっているので、この桜は一体なんだろう?というのが興味を持ったきっかけになります。

2016年に和歌山県那智勝浦町で特殊なヤマザクラを発見。

森林総合研究所 勝木氏:
標本をきっかけに、実物を見て判断したいと思い、2013年ごろから個人的に現地調査を始め、2014年から三重県にある日本樹木医会三重県支部に協力して頂き、紀伊半島の三重県側で調査を始めました。
調査を始めて2年くらい経った2016年3月に、三重県から和歌山県側まで足を延ばしてみようと、調査範囲を拡げたところ、那智勝浦町でヤマザクラとは思えないサクラを発見することができました。これをきっかけに、まずは現地の情報を集めるため、和歌山県の林業試験場にコンタクトを取り、本格的な調査協力を依頼させて頂きました。

「古座川町には変わったヤマザクラが多いらしい」

ー 古座川町でクマノザクラを発見された経緯を教えて下さい。

森林総合研究所 勝木氏:
2016年3月に那智勝浦町で妙なサクラを発見したことで、和歌山県で本格的な調査ができる場所を探していました。その時に林業試験場の職員の方から「どうやら古座川町には変わったヤマザクラが多いらしい」という話を聞くことができました。
林業試験場は以前、古座川町に建っていた繋がりもあり、町の許可を頂き同年6月に古座川町に来てサクラの調査を開始しました。 調査の中で、妙なサクラの葉を見た段階で、その時は新種かどうかまではわかりませんでしたが、学名は付けていい位の、見たことのないサクラだということがはっきりとわかりました。

新種とするか、変種扱いにするかは最後まで悩みました。

森林総合研究所 勝木氏:
その後、2016年・2017年と2年間調査を行い論文を作成しました。ただ、新種とするか、今まで報告された物の変種扱いにするかについては最後まで悩みました。理由としては、古座川町近辺には自生していないのですが、奈良県の北の方に分布するカスミザクラに系統的に非常に近いので、カスミザクラの変種という可能性がありました。
そこで、奈良県でカスミザクラとクマノザクラが、一緒に分布している地域を探し調査を行いました。調査の中で中間的な形態をもつサクラが発見されれば変種扱いにしたのですが、くっきり違いました。また開花期も違うので、これは新種だと改めて判断し論文を発表しました。

2016年・2017年と2年にわたる調査をまとめた研究論文が、日本植物分類学会発行の『Acta Phytotaxonomica et Geobotanica誌 69巻2号』(2018年6月下旬発行)に掲載され、国内の野生のサクラとして、およそ100年ぶりの新種の発見となりました。

勝木先生、お忙しい中取材を受けて頂き、貴重なお話をありがとうございました。
(取材日:2021年3月)

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