最近では美味しさで注目されるジビエですが、農作物の被害も多く、農家の方々の頭を悩ませる存在。その自然のバランスや維持を考えながらも、ジビエは古座川の新しい名物グルメとなって注目を集めています。
その裏で活躍するのは、和歌山県猟友会東牟婁支部支部長であり、和歌山県でも数人しかいない夜間銃猟射手として県の夜間銃猟事業などで活躍する父・木下淳さんと、現在は古座川町観光協会事務局長として働きながら、休日は父と共に狩猟や有害駆除をおこなう息子・木下昂さん。
これまでの狩猟を振り返りながら、古座川のジビエについてお聞きしました。
実は、Uターン親子。
父・淳さんは若い頃、一度古座川町から出て、東京で仕事をされていたそうで、数年経ったのちに家庭の事情で戻ってきた時の本音は、「もう少し都会で遊びたかった。(笑)」のだとか。
ただ、東京にいる間も、幼い頃から親の背中を追いかけながら、狩猟についていった古座川町での風景が頭に浮かぶことも多く、いずれ戻りたいと常々思っていらしたのだとか。
そんな父と同様、息子の昂さんも高校卒業後、大阪でイベント事業や音響効果の仕事をした後に、やはり父と同じく、古座川町へ帰ることを決意する。
頭に浮かんだのは、同じく「狩猟」の魅力だった。
父・淳さんが若い頃には、これほど古座川町に鹿はいなかったそうで、「昔、雌鹿は撃ってはいけなかった。ただそれがきっかけでどんどん繁殖が進み、今では僕らの狩猟だけでは追いつかないほど鹿が増えている。」と父・淳さんが語る。
国内最高水準の食肉管理体制をほこる食肉処理加工施設「山の光工房」
そんなジビエも、昔は、近所に配るか、自分たちの家で食べるだけだったが、今では加工する工房も古座川町内に誕生し、狩猟されたジビエはネットで購入することもできる。「自分たちだけでいただくには限界があるから、いろんな人にジビエを楽しんでもらえるようになって嬉しい。」と語る父の姿をみて、静かにうなずく息子・昂さんの姿が印象的だった。
古座川の味は、自然がつくった味。
たとえばぼたん鍋。一般的にはみそ味を連想するが、ここ古座川の猟師さんたちは決まって、すき焼き風味だそう。
「味噌を使うと本当の猪の肉の味がわからない」と、父・淳さんは語る。卵で食べてもよし、そのまま食べてもよし。古座川町にあるぼたん荘でも、やはり味噌ではなく醤油ベースのぼたん鍋。まさに古座川の味だ。
「牛や豚、鳥よりも、小さい頃から食卓には、鹿か猪がメインでした。」と息子・昂さんが笑う。
古座川流域では、木の切り株をくり貫いた「ゴーラ」と呼ばれる日本ミツバチの巣箱があちこちで見られるが、木下さん親子も、ゴーラの持ち主。
ひとつの種類の花の蜜を集め続ける西洋ミツバチとは異なり、いろんな花の蜜を集める日本ミツバチだからこそ、なんともいえない奥深い味に。お土産でも買えるそうだ。
「古座川町の味は、誰かの手で育てるというより、この自然が育ててくれた味。ジビエもはちみつもね。」と父・淳さんは笑う。
最後は、観光協会事務局長をつとめる息子・昂さんが、「僕らが大切にしてきた古座川町の味を、ぜひ実際に足を運んでいただいて、味わっていただきたいですね。」と締めくくった。
古座川ジビエ公式サイト